「虎砲泉の水で龍井茶をいれる」。杭州お茶と養生の旅。その3。

今まででいちばん贅沢だと思ったこと。
それは虎砲泉(こほうせん)の水をくんで、龍井茶をいただいたことでした。

「緑茶はやっぱり日本茶だ」

そう思って、あまり中国緑茶に興味を持っていなかった数年前。
虎砲泉の水でいれた龍井茶を飲んで、
これまで飲んだことのある龍井とは全く違うことに、びっくりそして感動。
さすが天下に名をとどろかす龍井茶。と思ったものの、
それから他のどの水を使っても虎砲泉の味には遠くおよばず、
お茶と水の関係を深〜く実感したのでした。



そして今回、杭州に行く機会をえた私。
「虎砲泉の水をゲットする」を第一の目標においたのでした。



虎砲泉の水を汲むポイントは一カ所。
しかも注ぎ口はひとつしかないので、いつも長蛇の列。
時間のたっぷりある老人たちが順番待ちをして、適当な時間に
おじさん、おばさんが手伝いにくる。
まともに並ぶと4〜5時間は並ぶこともザラらしい。

ということで、閉園間際の時間をねらうことにした。

冬場の閉園は5時半。5時に到着。もう暗くなり始めている。
チケット売場のよこにある売店でミネラルウォーターを買って
中を空けてしまおう。
「ミネラルウォーター4本ください」
「どのメーカーの?」
「どれでもいい。中の水は捨てて、虎砲泉の水を汲みたいから」
「もう今から入っても、水は汲めないよ。それよりここでしか売ってない
虎砲泉の水があるからそれを買えばいい」

え〜っ!! 売ってるの?
市販のミネラルウォーターと同様のボトル。
たしかに虎砲泉ミネラルウォーターと書いてある。

「中の水は飲めないから。これなら濾過してあるから大丈夫」
「えっ、飲めないって?だってみんな並んで汲んでるじゃない」
「そのまま飲むとおなかをこわす。これなら大丈夫。とても清潔だしね」

うう、どうしよう。
でもそれってやっぱり何かが変わってしまっているのでは・・・。
「買えない贅沢」「プライスレス」と、カード会社のCMが頭にちらつく。

「それじゃあ、それ2本と普通のミネラルウォーター2本ください」

水くみ場につくと5人のジジババ。
みんな灯油を入れるようなでかいボトルを持っている。

時間切れになっちゃうかな、と思いつつミネラルウォーターの中身を捨てていると

「わざわざ買った水を捨てているのかい」
「はい。旅行中で入れ物がなかったので」
「そうかい。わざわざ来たんかい。それっぽっちなら先にお汲みなさい」
「ありがとう。あの、これ、表で売っていたんですけど・・・」
「ああ、そんなのは偽物だよ」
「本当の泉の水が汲めるのはここだけなんだから」

そっか〜。まあ、地下水をくみ上げているのかもしれないけど、
それと自然に湧いて出た水はやっぱり何か違うかもしれない。

というわけでボトル4本を空けて、虎砲泉の水を汲みました。

虎砲泉の水でいれた龍井茶
やっぱり味が柔らかく、それでいて香りが立つ感じでした。
まんぞく、まんぞく。